世界のどこでも通じない感情論を繰り返していた野党は日本の恥さらし

 安全保障法制の採決をめぐり、民主党など野党が「強行採決だ」「国民の理解を得られていない」などと批判した。

 「強行採決」というのはマスコミ用語で、少数派が審議を希望しても、多数派が「審議が尽きた」として採決することをいう。だが、手続きに瑕疵(かし)がなければ、議会政治の基本である多数決による普通の採決である。

 なぜ強行採決がなされるかといえば、審議時間や国会会期が短いために、継続審議にしないと会期終了で廃案になってしまうからだ。

 安保法制では国会会期を延長したが、野党としては、このまま採決せずに審議を続けて、国会会期末で廃案になることを狙っている。

 一方、与党としては、昨年末の前回衆院選でも、2013年の参院選、12年末の衆院選でも、安保法制の制定を公約してきたので、政権を担って公約を実行しないと嘘つきになってしまう。そこで、会期内で成立させようとするわけだ。

 民主党は2年前の国会改革案で、国会審議の活性化を図るため「通年国会」の導入を盛り込んでいた。もし、民主党の言うような通年国会、つまり国会の会期がなくなれば、「強行採決」というマスコミ用語もなくなるだろう。ちなみに、海外で日本のような国会の会期を設けている国はあまりない。英米は会期は1年単位だし、仏独は任期が1会期である。そうした国では、国会会期という制約がなく、審議時間も長く取れるので、強行採決という慣習はない。

安保法制の審議時間は116時間30分で、正確な記録がある1975年以降では、2012年の社会保障と税の一体改革関連法(129時間8分)、1994年の政治改革関連法(121時間38分)、2005年の郵政民営化関連法(120時間32分)に次いで4番目の長さである。

 筆者は現役官僚当時、郵政民営化関連法を経験しているが、100時間を超えると質問も出尽くした。通常の法案では審議時間が30時間程度なので、100時間を超えると堂々巡りのようになる。

 安保法制でも似たような状況になっていた。もし維新の党が当初から対案を出していれば、もっと実のある議論もできただろう。その他の野党は対案もなしで、「集団的自衛権の行使を認めると戦争をする国になる」などと、世界のどこでも通じない感情論を繰り返していたのは、筆者としてあきれたところだ。


現状の日本は中国、北朝鮮の脅威にさらされている。集団的自衛権の行使を認めない同盟関係はあり得ないのが国際常識だ集団的自衛権の行使を認めないなら日米安保をいずれ放棄して、自前の防衛にならざるをえない。今の4倍以上の20兆円超の年間防衛費が必要になるが、それを覚悟できるか。

 抑止力があり安全保障効率がよく、しかもコスト安なのが、同盟関係・集団的自衛権だ。日米安保が時間を経て国民に定着したように、いずれ集団的自衛権も国民に定着するだろう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一
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