姿消えたハス、謎深まる 滋賀・草津、県内別の場所でも

国内最大級の群生地である滋賀県草津市の烏丸半島のハスに、過去にない異変が起きている。例年なら湖面を埋め尽くすハスの葉が、ほとんど見られない。食害、老化、病気などの可能性が取り沙汰されているが、今のところ原因は不明。草津市は調査を進めるとともに、観光業者らに状況を連絡するなど、対応に追われている。
 「一体何が起きたんやろう、と。こんなことは初めて」。草津市の写真家木村尚達さん(75)は、5月末に烏丸半島を訪れた時の驚きを振りかえる。京都写真家協会会長の木村さんは、15年にわたりハスの写真を撮影してきた。「このまま全滅すれば、観光資源として大きな損失だ」
 入り江状の地形がハスの成長に適し、約13ヘクタール以上で群生していた。例年なら7~8月にピンク色の花が一面に咲くが、草津市は6月30日、「開花が見込めない」と異例の発表をした。市公園緑地課は「県や関係機関と連携して原因を調べ、公表したい」という。
 どのような理由が考えられるか。群生地近くにある県立琵琶湖博物館の芦谷美奈子学芸員は、想定される原因の一つとして食害を挙げる。ミシシッピアカミミガメアメリカザリガニが成長初期の浮葉を荒らす事例は、他地域でも起きている。
 長年群生しているため地下茎が混み合い、成長力が弱まっている可能性もある。昨年は開花がまばらだった影響なども考えられ、「複数の原因が組み合わさっているのかもしれない」と指摘する。
 昨冬に大量に飛来した渡り鳥、オオバンの食害を疑う声も出ている。湖北野鳥センター(長浜市)の植田潤さんが29日、現地を観察した。「オオバンは雑食だが、壊滅的なほど新芽を食べ尽くすとは思えない」とみる。植田さんによると、長浜市の早崎内湖でも3年前からハスが見られなくなり、「ウイルス性の病気もありえるのでは」と語る。
 市商工観光労政課によると、開花時季に合わせた熱気球フライトやクルージング、ハス祭りは予定通り開催する。例年バスツアーも組まれており、市は観光業者に今年の状況を連絡しているという。同課は「県外からも大勢に来てもらっている。何とか回復してほしい」としている。

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