世界中から「ただ安いだけの車」と認識されている現代自動車

韓国の自動車最大手、現代自動車燃料電池車(FCV)の販売価格を4割以上も引き下げ、業界の関心を集めている。昨年12月にトヨタ自動車が発売したFCV「MIRAI」への対抗措置とみられるが、自動車の本体価格をほぼ半額に設定するのは前代未聞。FCVは次世代のエコカーの本命といわれるものの、まだ立ち上がったばかりの市場だけに、トヨタを意識した現代自の“安売り”戦略に、「あまりにも短絡的な価格設定」と疑問を呈する関係者は少なくない。

■値下げ率43%。1600万円が900万円に

現代自動車は不思議な会社である。ウォン高の影響などで収益が悪化しているのにもかかわらず、今後4年間で総額81兆ウォン(約8兆7千億円)の投資を決定したり、巨費を投じて新本社ビルの建設を表明したり…。韓国経済において絶大な力を持つ有力財閥系企業であり、またグループの鄭夢九会長によるワンマン経営とはいえ、日本の自動車関係者の1人は「経営に戦略性が感じられない」と指摘する。突然発表したFCVの大幅値下げも、そんな場当たり的な経営のひとつなのかもしれない。

韓国・聯合ニュースなど複数メディアによると、現代自はSUV(スポーツ多目的車)タイプの燃料電池車「ツーソン」の韓国での販売価格を1億5千万ウォン(約1600万円)から8500万ウォン(約900万円)に引き下げたと発表した。値下げ率は実に43%にのぼる大安売りである。
値下げは韓国国内を対象にしたものだが、海外での値下げも検討しているという。昨年12月に発売されたトヨタの「MIRAI」(約720万円)を意識したとみられるが、MIRAIは補助金もあり、実質500万円強で購入が可能となる。「4割も値下げしたにもかかわらず、
それでもトヨタより200万円、
補助金を含めると400万円近く高い
いうのは間の抜けた話だ。トヨタを抜き去ることのできない価格設定では意味がない」と前出の関係者は苦笑いする。

トヨタには追いつけない現代自の現実

今回の値下げで見えてくるのは、トヨタに対して異様なライバル心を燃やすものの、決して追いつくことはできない現代自に突きつけられた厳しい現実だ。

トヨタのMIRAIは「世界初のFCV市販車」と言われるが、現代自は2013年に発売した同社製FCVが「世界初」であると主張しているという。ただ、販売台数は韓国でわずか10台、欧米などで200台にとどまっており、市販車というよりも試作車という意味合いが強い。しかし、現代自にとってトヨタのFCVが「世界初」と称されるのは、屈辱なのだろう。もしも、これがトヨタではなく、米ゼネラル・モーターズ(GM)など欧米の自動車メーカーだったら、どのような対応だったのか…。

トヨタへの対抗心むき出しの現代自だが、開発・生産・販売・品質に至るまでその差は歴然である。むしろ、現代自が今後も世界有数の自動車メーカーであり続けるためには、何よりも設計・開発力を向上させる必要がある。

■燃費性能の水増し問題で制裁金110億円 

昨年11月、米司法省と米環境保護局(EPA)は現代自と傘下の起亜自動車が米国で販売した約120万台の燃費性能を過大表示した問題で、両社が民事制裁金1億ドル(約114億円)を支払うことで和解したと発表した。1億ドルは大気浄化法違反の民事制裁金としては過去最高額で、EPAによると、現代自と起亜の合計で約120万台の車両について、カタログ燃費を過大に表示していたという。EPAは「現代自と起亜は燃費性能を算出する際に、多くのテストから平均値を出す代わりに好ましい結果を抜き出したようだ」と指摘している。

現代自がかつて自動車市場に旋風を巻き起こし、一躍、世界シェア5位のメーカーに成長した最大の要因は、「低価格」と「デザイン」によるものといわれている。もちろん、日本でも軽自動車が市場全体の約4割に達するなど「低価格のクルマ」に対するニーズは強く、それがなくなることは決してない。

■「ただ安いだけの車」に未来はあるのか?
しかし、それも「安全」「品質」があっての「低価格」である。
現代自の場合、新車の天井から雨漏りがするなど品質トラブルが頻発し、世界中から「ただ安いだけのクルマ」と認識されている。

FCVの価格を4割も値下げし、話題を集めても商品は売れず、売れても赤字が積み重なるようでは、未来はない。現代自に今、求められているのは「対トヨタ」ではなく、自動車メーカーとして存続していくための抜本的な経営改革、つまり「対現代自」なのかもしれない。
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現代自動車に乗っている人を笑ってしまいそうだ・・w

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