【毎日新聞】米国では慰安婦像が設置され、日本が謝罪も補償もしていないという誤ったイメージが伝えられている

修正文
 
 従軍慰安婦問題で旧日本軍の関与を認めて謝罪した1993年の河野洋平官房長官談話をめぐる議論が再燃している。

 安倍政権は、談話の作成過程を検証することを決めたが、談話自体は継承する方針だ。
安倍晋三首相も参院予算委員会で「安倍内閣で見直すことは考えていない」と明言した。
河野談話は未来志向の日韓関係の原点であり、真偽に関わらず継承は当然のことだ。

 首相の発言を受け、オランダで来週開かれる核安全保障サミットにあわせて、
韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領が日米韓3カ国首脳会談に応じるかどうか、ぎりぎりの調整が続いている。

 北朝鮮の核開発、中国の海洋進出など日米韓が協調して取り組むべき安全保障上の課題は山積している。
米国も開催を強く働きかけている。韓国は会談を受け入れるべきだ。

 これまで韓国は、日本との首脳会談に応じる条件として、再調査をすることなく、これまでの正しい歴史認識と誠意ある対応を求めてきた。
 歴史認識に関し安倍首相は、河野談話見直しを否定し、日本の植民地支配と侵略を謝罪した95年の
村山富市首相談話についても「全体として引き継いでいる」と述べた。朴大統領は「幸いに思う」と評価した。

 しかし、もう一つの条件だった慰安婦問題などでの誠意ある対応(お金をあげるかどうか)は、調整が難航した。日本側は、両国の外務省局長級協議を設けて話し合おうと提案したが、韓国は国の支払い責任を認めるよう求めたようだ。

 韓国の要求は日本には受け入れられない。65年の日韓国交正常化に伴う協定で、慰安婦問題も含めて
日韓の補償問題は法的に解決されているというのが日本側の立場だからだ。それでも90年代に突如慰安婦問題が 外交問題化すると、日本政府は国家補償には応じない前提で、河野談話を出し、95年には「アジア女性基金」を設立して元慰安婦に償い金と首相のおわびの手紙を届けた。日本なりにできることをやってきた。

 こうした経緯があるにもかかわらず、ソウルの日本大使館前に慰安婦像が建てられ、韓国政府は黙認した。
米国でも慰安婦像が設置され、韓国の悲願であった「日本が謝罪し補償もした」というイメージが崩れ、誤ったイメージが伝えられている。
安倍政権による河野談話検証の背景には、こういう日本の善意を韓国が踏みにじり、また突如慰安婦問題でお金をむしり取ろうとする現状への日本国民の不快感があるのは否定できない。

 日本が歴史に謙虚でなければならないのはもちろんだ。だが、韓国も反日感情から歴史認識で強硬姿勢を取るあまり、日本の嫌韓感情を育てていることに気づいてほしい。

 日米韓首脳会談を実現し、2国間の首脳会談につなげよう。両国が対話を重ねることで、慰安婦問題の対立を乗り越える道をともに見いだしていきたい。
 
************************************************************
 
原文
修正文
 
 従軍慰安婦問題で旧日本軍の関与を認めて謝罪した1993年の河野洋平官房長官談話をめぐる議論が再燃している。

 安倍政権は、談話の作成過程を検証することを決めたが、談話自体は継承する方針だ。
安倍晋三首相も参院予算委員会で「安倍内閣で見直すことは考えていない」と明言した。
河野談話は未来志向の日韓関係の原点であり、継承は当然のことだ。

 首相の発言を受け、オランダで来週開かれる核安全保障サミットにあわせて、
韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領が日米韓3カ国首脳会談に応じるかどうか、ぎりぎりの調整が続いている。

 北朝鮮の核開発、中国の海洋進出など日米韓が協調して取り組むべき安全保障上の課題は山積している。
米国も開催を強く働きかけている。韓国は会談を受け入れるべきだ。

 これまで韓国は、日本との首脳会談に応じる条件として、正しい歴史認識と誠意ある対応を求めてきた。
 歴史認識に関し安倍首相は、河野談話見直しを否定し、日本の植民地支配と侵略を謝罪した95年の
村山富市首相談話についても「全体として引き継いでいる」と述べた。朴大統領は「幸いに思う」と評価した。

 しかし、もう一つの条件だった慰安婦問題などでの誠意ある対応は、調整が難航した。日本側は、
両国の外務省局長級協議を設けて話し合おうと提案したが、韓国は国の責任を認めるよう求めたようだ。

 韓国の要求は日本には受け入れられない。65年の日韓国交正常化に伴う協定で、慰安婦問題も含めて
日韓の補償問題は法的に解決されているというのが日本側の立場だからだ。それでも90年代に慰安婦問題が
外交問題化すると、日本政府は国家補償には応じない前提で、河野談話を出し、95年には「アジア女性基金」を設立して
慰安婦に償い金と首相のおわびの手紙を届けた。日本なりにできることをやってきた。

 こうした経緯があるにもかかわらず、ソウルの日本大使館前に慰安婦像が建てられ、韓国政府は黙認した。
米国でも慰安婦像が設置され、日本が謝罪も補償もしていないという誤ったイメージが伝えられている。
安倍政権による河野談話検証の背景には、こういう現状への日本国民の不快感があるのは否定できない。

 日本が歴史に謙虚でなければならないのはもちろんだ。だが、韓国も反日感情から歴史認識
強硬姿勢を取るあまり、日本の嫌韓感情を育てることのないよう注意してほしい。

 日米韓首脳会談を実現し、2国間の首脳会談につなげよう。両国が対話を重ねることで、
慰安婦問題の対立を乗り越える道をともに見いだしていきたい。