騒ぎを大きくした本人は橋下自身

騒ぎを大きくした本人は橋下自身

今回の橋下の出自を巡る週刊朝日騒動も、これと全く同じ図式が当てはまる。よくよく考えてみても欲しい。あの記事がそんなに騒ぐことなんだろうか?橋下の出自が、いわば「血が汚れている」みたいな文脈で展開されているのだけれど、おそらくそのまま放っておいても大したことにはならなかったと僕は考える。もともと差別的なニュアンスが強すぎて他のメディアが取り上げるのが厳しいネタ。だから、テレビも他のメディアもおそらくビビってスルーしたに違いない。ところが、これが大騒ぎになった。なぜ?……なんのことはない、当の橋下がこれに怒り心頭に達したことを記者会見し、メディアイベントとして話題を盛り上げてしまったからだ。これで、盛り上がった。そう、事をデカくした張本人は橋下その人だったのだ。

橋下劇場=スペクタクルの展開

だが、こうなってしまうと、もう橋下の思うツボ。週刊朝日=悪役、橋下=正義の味方というベタな図式の下、やりたい放題が始まる。橋下は「次回の記載内容を見ていきたい」と発言をした。ビビった当の週刊朝日の方は、次号の巻頭で謝罪、連載を中止するとともにチェック機能を徹底検証すると宣言。事実上、「全面降伏」する。

ところがこの発言はギミックだった。橋下は、今度はこれに噛みつく。紙面で謝罪するなどマナーや社会性のない鬼畜集団だ!ときたのだ。しかも、こうやって雑誌に謝罪文を掲載することで売り上げを伸ばすような阿漕なことまでやっている。許せない!と糾弾はエスカレート。そして、朝日新聞の記者会見は再会するが、週刊朝日の対応は非常識で許せるものではないという文脈の論調を展開した。その結果、この騒ぎ=「橋下劇場」はさらに盛り上がりをみせていったのだった。

しかし、この論法はちょっとおかしい。一般的には、騒動は週刊朝日のやり方で一件落着となる。誌面での誤りは誌面で謝罪というのがメディアの一般的なやり方だからだ。でも、誰もそれに気づいていない。なぜ?それは橋下の秀逸なパフォーマンスにわれわれが完全に幻惑されてしまったからに他ならない。

勧善懲悪劇場のクライマックスは、まだこれから?

おそらく、この橋下劇場はまだ終わらないだろう。次には週刊朝日の編集長がメディアの前に引きずり出されるなんてところにまで話が進む可能性がある。しかも、橋下はそれを狙っているようにしか、僕には思えない。

これは「メディアの魔術師=メディア使い」である橋下の見事のメディア戦略だ。自民党民主党総裁選の絡みの中で、ここのところ維新の会の支持率は急降下している。だからなんとしても、ここで起死回生の一発を撃つ必要がある。そのためにはメディアに橋下が露出し、さながら正義の味方=ジェダイの騎士のようなカッコイイ活躍をする必要がある。で、そういったパフォーマンスが展開出来るのであるのならば悪役=ダースベイダーは誰でも構わない。そして、狙い撃ちされたのが週刊朝日だったのだ。

われわれは「勧善懲悪もの」が大好きだ。正義の味方が悪をくじく姿を是非とも見物したい。この要望を察知している橋下は無理矢理、週刊朝日という悪役を作りだし、それを叩きはじめた。で、叩けば叩くほどわれわれ=オーディエンスはカタルシスを感じる。だから誌面で謝罪をさせ、次にはこの謝罪のやり方を叩き、さらにダースベイダー=週刊朝日の編集長その人を引っ張り出して、ジェダイの騎士=橋下による成敗(あるいは「公開処刑」)のスペクタクルを期待する。そして、こういう劇場が展開している間、人々は激情=熱狂しつづけ、そういったカタルシスを感じさせてくれる橋下にワクワクするのだ。また、メディアもこの熱狂が視聴率と発行部数に直結することを動物的カンで知っている。だから、延々と報道をし続ける。そうすることで橋下と維新の会の支持率は上がっていくのである。
 
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いやいや、橋下と維新の会の支持率は、下がり続けるでしょう。
 
どうぞ騙される国民が、一人でも少なくなりますように・・・