【主張】「不起訴」希望発言 首相の資質を欠いている

【主張】「不起訴」希望発言 首相の資質を欠いている
2010.1.23 02:45
 鳩山由紀夫首相が検察捜査への介入発言をやめない。

 民主党小沢一郎幹事長に対して「(検察と)どうぞ戦ってください」と述べたことが批判されたばかりだが、今度は小沢氏の資金管理団体の土地購入をめぐる政治資金規正法違反事件で、すでに逮捕された石川知裕衆院議員について「起訴されないことを望みたい」と語った。

 行政のトップが特定の刑事事件の捜査の行方について一方的な期待感を表明することなどあってはならないことだ。司法当局の独立性を侵害し、法の統治を逸脱する行為である。首相としての資質が問われている。

 首相は22日の衆院予算委員会で「誤解を与えてしまうなら撤回したい」「検察の捜査に介入する意図は毛頭ない」と述べた。21日夜に記者団に語った不起訴を願う発言を一晩で撤回した格好だ。

 釈明や撤回に言及しているが、度重なる発言は、首相自身が先頭に立って捜査を妨害しているように国民の目には映る。真相解明のための捜査に公正・中立を保つことこそ首相の責務だろう。

 平野博文官房長官は22日の会見で「慎重に発言した方が誤解を招かない」と苦言を呈した。

 首相は21日夜の発言の際に「この逮捕の事由にもよく見えないところがある」と捜査に対する疑問も呈している。検察捜査に対する発言を確信的に重ねているとしか思えない。首相と政権与党の最高実力者である小沢氏が連携し、政権内部で検察当局と対決する構図は異様だ。

 首相の検察批判に加え、土地購入事件をめぐる報道に対し、看過できない閣僚発言も出てきた。放送行政を管轄する原口一博総務相が「『関係者によると』という報道は、公共の電波を使ってやるにしては不適だ」と、テレビ報道のあり方を批判した。平野官房長官も「『関係者によると』との表現で、一方的に出てくる点が少し偏っている」と述べた。

 マスコミ側も、情報の出どころをできるだけ特定して報じる方が望ましいが、取材源の秘匿が必要な場合は「関係者」を用いることがある。

 これらは知る権利や報道の自由の観点から、メディアが判断すべきことだ。閣僚が言及するのはきわめて問題が多い。都合の悪いマスコミ報道を牽制(けんせい)するねらいがあると受け止められかねない。