名は体を表す?

アメリカ文化に貢献したとして、日本人で初めてケネディ・センター名誉賞を受賞した、指揮者の小澤征爾さんは、旧満州奉天に生まれた。父親が、親交のあった当時の関東軍の参謀、板垣征四郎石原莞爾から、1字ずつもらって名付けたエピソードはよく知られている。
 ▼これほど由来の分かりやすい名前は、最近では珍しい。読み方の見当がつかないような名前も、目立つようになった。女子のランキングトップ10から、「子」のつく名前が消えたのが、昭和61(1986)年である。
 ▼文化人類学者の小林康正さんによると、この頃から「個性的な名前」のブームが広がっていく。平成15年には、アイドルグループ「SMAP」が、「世界に一つだけの花」を歌って、大ヒットする。人は生まれながらにして「オンリーワン」の存在、とのメッセージが、名付けの動向にも影響を与えたらしい(『名づけの世相史』風響社)。

 ▼今も昔も、子供の名前に込める親の願いは、変わらない。「健やかに育ち、幸せな人生を送ってほしい」。「天翔(てんしょう)」という、立派すぎる名前を持つ24歳の男は、そんな親の期待を残酷なまでに裏切った。熊本県益城町に住む自称会社員、吉村容疑者は、殺人などの疑いで逮捕された。
 ▼ホテルの一室で、知人女性の3カ月の男児に、覚醒剤を投与して中毒死させたという。信じがたい所業である。母親が気づいた時、男児は既に口から泡を吹いている状態だった。赤ちゃんの名前は「悠真」、今年のランキング2位に入っている。

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