民主党のデマによって、若者が戦場に送られる危険性が高まる

 安全保障関連法制について、夕刊フジで7月に連載した。そこで書いた「自衛隊違憲だという憲法学者が、集団的自衛権違憲だといっても何の意味もない」とか、投稿での「たとえ後方支援だけでなく中東の戦地に派兵しても、自衛隊員はトラック運転手よりずっと安全な職業であり戦死者続出などデマだ」といった指摘は、かなりの反響をいただいた。

 国会の議論で法案修正など運用の歯止めがあっても良かったと思うが、民主党違憲論に拘泥したために、安倍晋三首相にとってすら意外かもしれない無修正での法案成立となったのは皮肉だ。

 ただ、困ったことは、「戦争法案だ」「平和主義の終焉(しゅうえん)」とかいう、一部メディアや反対団体による宣伝が外国メディアで流布されたことだ。

 その結果、海外派兵が可能になったとの誤解が米政界に広まると、圧力が強まることが予想される。すでに大統領選に共和党から名乗りを上げた不動産王、ドナルド・トランプ氏などから「日本は軍事的貢献がない」と批判が出ている。

 太平洋戦争のようなおびただしい戦死者が出るという宣伝も浸透して、自衛隊員の募集に悪影響が出ないか心配だ。ドイツは第2次世界大戦で数百万人の戦死者を出したが、アフガン派兵では数十人しか戦死していない。まして後方支援だけしか今回の法制では認めていないのに、悪質なデマで自衛隊員のなり手が減れば、いつか憲法を改正して徴兵制の必要も出てきかねない。

 つまり、思慮のないデマこそ、安保法制より、よほど日本の若者を戦場へ送ることにつながりかねない危険なものだ。


 日本は戦後、「日米安保」「憲法第9条」「経済的貢献」の3点セットの絶妙な合わせ技で平和を保ってきた。20年余り前にPKO(国連平和維持活動)を開始するなど、軍事的貢献も徐々に拡大して、緩やかに普通の国に近づくということで国際社会の最大公約数的な了解を得てきた。今回の法制で規定された役割がまた20年くらい維持できればと思うが、身勝手な議論ばかりしていると、それほど持たないかもしれない。


 折しも、北京では時代錯誤の大軍事パレードが行われて、世界をあきれさせた。世界からならず者的な指導者が多く参加したなかで、日本代表は村山富市元首相になるはずだったが、病気で取りやめた。もし、それが仮病だったら、この老人に最後の良心が残っていたということで、ちょっと褒めてあげたい。


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