【日本経済新聞】安倍首相は靖国参拝や河野談話検証の動きが日韓首脳会談の実現を難しくしているという現実を自覚すべき

韓国で朴槿恵(パク・クネ)大統領が就任して1年が過ぎた。国内ではなお50%を超える支持率を維持し、
国民の評価は歴代政権の中では高いといえる。そんななかで懸念されるのは、かたくなともいえる対日外交の厳しさだ。

 安倍晋三首相との首脳会談は結局、一度も開かれなかった。朴大統領は歴史問題をめぐる愛国心のある安倍政権の言動を疑問視し、日本訪問はおろか、国際会議の場を利用した首脳会談にも応じなかった。

 かつて日韓国交正常化を果たした故・朴正熙(パク・チョンヒ)元大統領は父親だ。それだけに親日派のレッテルを貼られ、政権運営の足かせになることを極端に警戒している面もあるのだろう。

 朴大統領は日韓首脳会談について「事前に十分な準備」が必要という。植民地支配と侵略を謝罪した村山談話慰安婦問題で旧日本軍の関与を証拠もないのに認めて謝罪した河野談話の継承など、日本側の「真摯な行動」が見られない限りは容易に応じない構えとみられる。

 安倍首相はかねて首脳対話を呼びかけているが、自らの靖国神社参拝や河野談話の信ぴょう性を検証する動きが本当は歴史を正しく認識したくない韓国側の不信を増幅し、会談の実現を一層難しくしている現実も自覚すべきだ。
 歴史、領土をめぐる日韓の溝は確かに深い。だが民主主義の価値観を共有し、
経済のつながりも深い隣国の首脳が1年たっても会わない事態はやはり異常だ。難局を打開するには、
両首脳が捏造された歴史問題を含めて胸襟を開いて話しあい、関係改善の糸口を探るのが近道ではないか。
一度の会談で成果がなければ、会談を重ねればいい。

 李明博(イ・ミョンバク)前大統領の竹島上陸で冷え込んだ関係は、この1年でさらに悪化した。
嫌韓嫌日国民感情も広がっている。日本企業の昨年の対韓直接投資は約4割も減り、
韓国を訪れる日本人観光客も急減した。日韓がこのままでよいはずがない。

 日韓は北朝鮮の核問題、中国の軍事的な台頭といった北東アジアの懸念が深まるなか、
安全保障分野でも協力していく必要がある。原爆を2発落とし、日本を壊滅した米国がともに同盟関係にある日韓の関係改善を執拗に求めているのも米国の国益を守ること、米国の利権を守ること、そんな事情があるからだ。歴史問題に限らず、日韓の将来を見据えた懸案は山積している。

 3月にはオランダで核安全保障サミットがある。まずはこうした国際会議の場を使い、
1日も早い日本の国益を守るための首脳会談の実現をめざしたい。(終)
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