「豚に真珠」か「豚と心中」か[きっこのブログ:野田会見発言の矛盾・欺瞞を列挙し具体的に検証・反論]2

そんなワケで、他にもツッコミどころは満載だけど、とにかく「再稼働ありき」のシナリオに沿って進められてきた茶番劇だから、「電力不足」も「経済の問題」もすべてはアトヅケの理由でしかない。だいたいからした、関電は企業秘密だからとデータの詳細を公表せずに「15%の不足になる」って言ってるワケで、その前には「20%の不足になる」、その前には「12%の不足になる」、その前には「7%の不足になる」って言ってた。去年の暮れから5月までの半年間に、5回も数字を変更してるのだ。こんなもん信用できるか!

それ以前に、関電は、もともと「今年の夏が一昨年並みの猛暑になった場合、真夏のピーク時に15%ほどの電力不足になる可能性がある」って言ってたはずだ。そして、そのあとに、気象庁が今年の夏の長期予報を発表した。気象庁によると今年の夏は「東日本は例年並みか例年以下、西日本は例年並み」ってことだそうだ。つまり、この時点で、もう電力不足は回避されたってことになる。ま、予想はあくまでも予想だから、この通りにはならないかもしれないけど、少なくとも「一昨年並みの猛暑」になる可能性は極めて低くなったワケだ。

仮に、今年の夏が一昨年並みの猛暑になったとして、関電のインチキ試算を鵜呑みにしたとしても、15%ほどの電力不足になるのは真夏のピーク時、昼間の2~3時間だけの話だ。それなのに、今日の会見で野田首相は「仮に計画停電を余儀なくされ、突発的な停電が起これば、命の危険にさらされる人も出ます。仕事が成り立たなくなってしまう人もいます。働く場がなくなってしまう人もいます」って、アホか?朝から晩まで何日間も停電してれば多くの人が困るだろうけど、1日のうち事前に分かってる時間帯の2~3時間だけの停電で「働く場がなくなってしまう人もいます」ってバカじゃないの?

原発事故のせいで、働く場どころか、家も故郷も奪われてしまった人たちが数えきれないほどいるのに、よくもまあこんなセリフを口にできたもんだよ、まったく!いくら官僚が書いた作文を棒読みしてるだけだからって、ほんのわずかでも原発事故の被害者たちのことが頭の片隅にでもあれば、こんな無神経なセリフなんて口にできるワケがない。


‥‥そんなワケで、「原発依存からの脱却という野田政権の大きな目標は決して揺るがない」と言いつつ、手を変え品を変え原発を推進してる野田首相だけど、今日の会見で一番言いたかったことは、次の部分に尽きると思う。


「夏場の短期的な電力需給の問題だけではありません。化石燃料への依存を増やして、電力価格が高騰すれば、ぎりぎりの経営を行っている小売店や中小企業、そして、家庭にも影響が及びます。空洞化を加速して雇用の場が失われてしまいます。そのため、夏場限定の再稼働では、国民の生活は守れません」


大阪市橋下徹市長が「電力不足になるという夏場だけの再稼働なら容認する」って言ったことに対して、野田首相は、今度は「電力不足」じゃなくて「燃料費の問題」を引っ張り出してきて、夏場だけじゃない「今まで通りの通年稼働」をゴリ押ししてきたってワケだ。昔から「きっこのブログ」を読んでる賢明なる読者諸兄なら、「火力よりも原子力のほうが発電コストが安い」ってのは原発推進派によるトリックだってことをご存知だと思う。原発の発電コストは、膨大な量の使用済み核燃料の処分費用を計上しないで計算してるから火力よりも安くなってるだけで、10兆円とも20兆円とも言われてる使用済み核燃料の処分費用もプラスして試算すると、発電コストは火力よりも高くなる。

福島第一原発がお手上げ状態なのにも関わらず、こんな子ども騙しのトリックを使ってまで大飯原発を強引に再稼働しようとしてる意味は、今日の会見の次の言葉にすべて集約されている。


「なお、大飯発電所3、4号機以外の再起動については、大飯同様に引き続き丁寧に個別に安全性を判断してまいります」


そう、野田政権が目指しているのは、大飯原発の再稼働ではなく、日本中すべての原発の再稼働であり、大飯原発はその免罪符に過ぎないのだ。とにかく、どれほど強引なやり方でも構わないから大飯原発を再稼働させ、次に四国の伊方原発、次に北海道の泊原発、次に九州の玄海原発と、ドミノ倒しのように再稼働して行き、ゆくゆくは青森の大間原発や山口の上関原発の建設計画も復活させようと目論んでいるのだ。これは、経産省の内部資料に明記してあることだ。こんなことを水面下で計画しているクセに、国民に対しては平然と「原発依存からの脱却という野田政権の大きな目標は決して揺るがない」と言ってのける二枚舌ぶり。


‥‥そんなワケで、あまりにもミゴトな「再稼働ありき」の茶番劇だけど、すべては経産省の官僚が書いたシナリオだから、少しでもシナリオをジャマするものが現われると、身内を総動員して潰しにくる。たとえば、2日前の6月6日のこと、こんなニュースがあった。


大飯原発、地表ずれる可能性 「早急に現地調査を」 専門家指摘」
再稼働問題で注目される関西電力大飯原発福井県)で、敷地内を走る軟弱な断層(破砕帯)が近くの活断層と連動して動き、地表がずれる可能性があるとの分析結果を渡辺満久東洋大教授(変動地形学)と鈴木康弘名古屋大教授(同)が6日まとめた。渡辺教授は「原子炉直下を通る破砕帯もあり、早急に現地調査すべきだ」としている。原子炉直下の破砕帯が動いて地表がずれると、安全上重要な設備を損傷させる恐れがあるため、原発の立地場所として不適格となる可能性もある。
http://www.47news.jp/47topics/e/230072.php


原子力ムラの懲りない面々にしてみれば、ようやく野田首相の再稼働宣言にまでこぎつけたとこなのに、こんなことでジャマされたらシナリオが台無しになっちゃう。そこで経産省は子分の原子力安全・保安院を使い、ソッコーでこの発表を潰しに出た。


大飯原発地下の断層、保安院が活動の可能性否定」
政府が再稼働を目指す関西電力大飯原子力発電所3、4号機(福井県おおい町)の敷地の地下にある断層が活動する可能性を専門家が指摘した問題で、経済産業省原子力安全・保安院は7日、「断層の上にある地層は変形しておらず、活動性はない」と否定した。
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20120608-OYT1T00293.htm


6日に発表したら翌日の7日に否定、まさに電光石火の神業で、これも「6月8日に野田首相が再稼働宣言をする」っていうシナリオを成立させるための強引な手法だ。だって、専門家たちは「敷地内を走る軟弱な断層(破砕帯)が近くの活断層と連動して動き、地表がずれる可能性がある」って指摘してるのに、原子力安全・保安院の反論は「断層の上にある地層は変形しておらず、活動性はない」って、よく読むとおかしくない?専門家は「地表がずれる可能性がある」って「将来的な可能性」を指摘してるのに、保安院は「地層は変形しておらず、活動性はない」って「現在までのこと」を言って否定してるんだよ。どう考えてもおかしいじゃん。

その上、保安院は、全国の原発の中で事故が起こる可能性が高いワースト5に数えられてる美浜原発2号機についても「40年を超えて運転しても問題ない」って言うトンデモ認可まで出しちゃった。これは、敦賀原発を立地する敦賀市の市長で、「全国原子力発電所所在市町村協議会」の会長で、原発関連の議員に公費でカニを贈ってたことでもオナジミの河瀬一治が、自分のとこの敦賀原発1号機が40年を超えて使えなくなっちゃったために、「特例を認めろ!」って騒いでたことに由来してる。ようするに、この「老朽化した原発の特例措置」ってのも、1つを認めて、あとはナシクズシ的に認めちゃおうって腹なのだ。


‥‥そんなワケで、まだまだ言いたいことはマウンテンだし、「再起動させないことによって、生活の安心が脅かされることがあってはならないと思います」ってセリフにも呆れ返ってるんだけど、これ以上書いてるとあたしの血圧も高くなりすぎちゃうから、今日はこの辺にしとこうと思う。とにかく、あたしが言いたいことは、こんな人のデタラメな判断の巻き添えになるのなんてマッピラだってことだ。軟弱な断層の真上にある、何の安全対策も行なってない原発野田首相の判断なんかで再稼働して、もしも大地震が起こったら、「豚に真珠」じゃなくて「豚と心中」だ!冗談じゃない!‥‥ってなワケで、野田首相とおんなじ民主党川内博史議員のツイートを紹介して終わりにしようと思う今日この頃なのだ。

kawauchihiroshi (川内 博史)
総理は「電気代が上がると、中小企業や家計、産業に打撃がある。だから再稼動」と言った。消費大増税は、どうなんですか?総理の発言は、ご都合主義も極まれりだ。行政の長としての発言ではない。それぞれの担当の官僚の振付通りだ。だから発言に矛盾が生じる。目を覚まして欲しい。野田佳彦さん。
2012.06.08 22:22
http://twitter.com/kawauchihiroshi/status/211085674265313280