「豚に真珠」か「豚と心中」か[きっこのブログ:野田会見発言の矛盾・欺瞞を列挙し具体的に検証・反論]

「豚に真珠」か「豚と心中」か[きっこのブログ:野田会見発言の矛盾・欺瞞を列挙し具体的に検証・反論]

2012.06.08
「豚に真珠」か「豚と心中」か

大飯原発の再稼働に反対する抗議行動は各地で行われてるけど、目下のところ、首相官邸前での抗議行動が一番大きなウネリになってる。やっぱり、野田首相が「私が判断する」と言ったことが原因だろう。

昨日の6月7日は「原発いらない福島の女たち」が首相官邸前に横たわる「ダイイン」http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2012060802000117.htmlで抗議を行なった。加藤登紀子さんや社会学者の上野千鶴子さんたちも応援に駆け付け、詩の朗読や踊りなど女性らしいパフォーマンスで「脱原発」や「再稼働反対」を訴えた。あたしはUstreamの中継を観てたけど、福島からきたお母さんの1人が、「野田首相!私たちは1年以上も、辛く、苦しく、悲しい日々を送ってきました!この苦しみは、これからもずっと続いて行くんです!こんな思いをするのは私たちで最後にしてほしい!」と涙ながらに訴えた言葉が胸に突き刺さった。

そして今日、6月8日は、野田首相が夕方の会見で再稼働を宣言すると予告したもんだから、先週の6月1日の2700人を大きく超える4000人が集まった。午後6時になり、スピーカーから野田首相の会見の音声が流れ始めると、最初は静かに聞き入っていた人たちも、すぐに騒然とし始めた。野田首相が「福島を襲ったような地震津波が起こっても、事故を防止できる対策と体制は整っています」と言った辺りからだ。

そして、「もし万が一すべての電源が失われるような事態においても、炉心損傷に至らないことが確認をされています」と言ったところで、あちこちから「嘘をつけ!」「ふざけるな!」「恥を知れ!」という罵声が飛び出し始め、アッと言う間に「再稼働反対!再稼働反対!」というシュプレヒコールが巻き起こった。野田首相の会見は始まったばかりだったが、もはやその声は誰の耳にも届かない。4000人のシュプレヒコール首相官邸前を席巻した今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?


‥‥そんなワケで、首相官邸前に集まった4000人を始め、全国の数えきれないほどの人たちを大激怒させた野田首相の会見の全文を披露する。だけど、最初に断っとくけど、血圧の高い人は読まないほうがいいと思う。低血圧のあたしでさえ、あまりの怒りに脳の毛細血管が何十本かブチ切れたから、もともと血圧の高い人の場合は、大変なことになっちゃう可能性があるからだ‥‥ってなワケで、ちょっと長いけど、コレがツッコミどころ満載で、支離滅裂で、矛盾と詭弁が入り乱れてる野田首相の会見の全文だ。


‥‥そんなワケで、あまりの支離滅裂さに、開いた口からエクトプラズムが抜け出して幽体離脱しちゃった上に窓から恐怖新聞が届きそうなイキオイなんだけど、ここまでメチャクチャだと1つ1つツッコミを入れてるヒマがない。だからザックリと行くけど、まずは首相官邸前に集まった4000人を激怒させた問題の部分だ。


「国民生活を守ることの第1の意味は、次代を担う子どもたちのためにも、福島のような事故は決して起こさないということであります。福島を襲ったような地震津波が起こっても、事故を防止できる対策と体制は整っています。これまでに得られた知見を最大限に生かし、もし万が一すべての電源が失われるような事態においても、炉心損傷に至らないことが確認をされています」


この部分でのポイントは、「国民生活を守ることの第1の意味は、次代を担う子どもたちのためにも、福島のような事故は決して起こさないということであります」っていう前置きから入れば、普通は「だから原発は再稼働しません」「脱原発を目指します」ってなるのが当たり前の流れなのに、この前置きから強引に「福島を襲ったような地震津波が起こっても、事故を防止できる対策と体制は整っています」っていう大嘘へと繋げたことだ。

関電がたった2日で作った安全対策の工程表http://www.kepco.co.jp/pressre/2012/pdf/0409_1j_02.pdfには、外部電源が喪失した場合の予備の電源を作る計画だの、原子炉にベントフィルターを設置する計画だの、地震津波に強い免震事務棟を造る計画だの、他にもいろいろな安全対策に関する計画が書かれてる。だけど、その大半は「これからやります」っていう予定の話であって、現時点では「絵に描いた餅」だ。

たとえば、外部電源が喪失した場合の予備の電源については「平成25年12月完了予定」って書かれてる。つまり、来年の12月までに、もしも外部電源が喪失するような事故が起こったらお手上げ状態になるワケだ。原子炉にベントフィルターを設置する計画にしても「27年設置予定」、つまり、3年後までに福島第一原発と同様の事故が起こったら、ベントで原子炉内の圧力を下げることができずに、福島第一原発を超える大爆発が起こることになる。

そして、事故が起こった場合に最も重要になる免震事務棟に至っては、「平成27年に運用開始できるように検討を進めていく」って書かれてるだけだ。「平成27年に運用開始予定」でも遅すぎるのに、これから「検討を進めていく」ってんだからシャレにならない。今、福島第一原発が何とか持ちこたえてるのは、この免震事務棟を作業員たちの前線基地として使っているからで、これがなければ始まらないのだ。

こんな状態なのにも関わらず、野田首相は、平然とこうノタマッた。


「福島を襲ったような地震津波が起こっても、事故を防止できる対策と体制は整っています」


その上、こんなことまで付け足した。


「もし万が一すべての電源が失われるような事態においても、炉心損傷に至らないことが確認をされています」


もう、完全に意味が分からない。安全対策の工程表に書かれてる内容の大半は「これから何年後かまでに対応する」ってワケで、今現在は「工程表に書かれた安全対策のほとんどができていない状態」なのに、野田首相は胸を張って「福島を襲ったような地震津波が起こっても、事故を防止できる対策と体制は整っています」と言い切った。去年の12月に、溶け落ちた核燃料がどこにあるのかも分からない状態で、大量の放射性物質を垂れ流してる状態で、「福島第一原発の原子炉の事故そのものは収束しました」って宣言したのとおんなじフレーバーだ。

その上、「もし万が一すべての電源が失われるような事態においても、炉心損傷に至らないことが確認をされています」と来たもんだ。すべての電源が失われても炉心が無事だって言うのなら、福島第一原発の1号機から3号機までの炉心は何が原因で溶け落ちたんだよ?それ以前に、「確認されています」って、いつどこで確認されてるんだよ?だいたいからして、すべての電源が失われても炉心は損傷しないって言うのなら、非常用電源なんか必要ないじゃん。

そして、このトンチンカンな安全宣言に続くのが、次の責任転嫁だ。


「勿論、安全基準にこれで絶対というものはございません。最新の知見に照らして、常に見直していかなければならないというのが東京電力福島原発事故の大きな教訓の一つでございました。そのため、最新の知見に基づく30項目の対策を新たな規制機関の下での法制化を先取りして、期限を区切って実施するよう、電力会社に求めています」


おいおいおいおい!今「福島を襲ったような地震津波が起こっても、事故を防止できる対策と体制は整っています」って言い切ったばかりなのに、今度は「最新の知見に基づく30項目の対策を新たな規制機関の下での法制化を先取りして、期限を区切って実施するよう、電力会社に求めています」って、電力会社に丸投げして、これから実施するように指示をしたってこと。つまり、今はまだ何も実施してないってことじゃん!

そして、トドメのひとことが炸裂!


「こうした意味では、実質的に安全は確保されているものの、政府の安全判断の基準は暫定的なものであり、新たな体制が発足した時点で安全規制を見直していくこととなります」


なんじゃこりゃ~!さっきは胸を張って「福島を襲ったような地震津波が起こっても、事故を防止できる対策と体制は整っています」って断言したクセに、その自分の断言を「政府の安全判断の基準は暫定的なもの」だから「新たな体制が発足した時点で安全規制を見直していく」って、ふざけんのもタイガイにしろってんだよ!ようするに、これで再稼働して大地震が起こって福島を超える大惨事になった場合に、「野田首相地震津波が起こっても事故を防止できる対策と体制が整っていると言ったじゃないか!」って文句を言うと、「私はあくまでも政府の安全判断の基準は暫定的だと言っておいたはず」って言って逃げることができるってスンポーだ。この自己防衛のための布石、シビレちゃうねえ。


‥‥