空前絶後のバラマキ政策で農家を蹂躙したくせに

安倍総理は、国会質疑などで民主党から政策批判されたとき、民主党政権時代の稚拙な政策を持ち出して反撃する。「民主党が言うな(笑)」と。民主党政権は心底酷かったので、安倍総理が返り討ちにする様は勧善懲悪的でスカッとする。

ただ、残念ながらこれを生産的・建設的な議論とは言い難い。質問に対する答えにも、課題に対する説明になっておらず、不毛な議論による時間の浪費でしかない。では、どうすれば改善するのだろう。

安倍自民党を支持しない人々は、「安倍総理が真面目に答弁するべきだ」と思うかもしれない。「不誠実だ」と。しかし、no-risuには賛同しかねる。民主党の質問内容と態度が悪すぎること、傲慢で悪意に満ちていることこそが問題なのだと思う。

民主党は相手にされていない。民主党が謙虚かつ誠実な態度を示さねば、民主党議員が政治家として成長しなければ、いつまで経っても同じ土俵には立てない。だから、まずは民主党政権時代の失敗を、素直に認める謙虚さを見せるべきだ。

1月12日、民主党福島伸享議員がTPP問題について、農政の観点から安倍総理を批判した。しかし、TPPは民主党政権時に菅直人が唐突に「やります」と宣言して始まった。「聖域無し、100%関税撤廃」を目指し、農林水産業界を震撼させた。

その民主党議員がTPP問題と農政を語るのなら、慎重に慎重をきして、極めて謙虚なスタンスで質疑に臨まねばならないはずだ。しかし、福島議員には謙虚さの欠片も無く、甚だ傲慢な態度が目についた。あまりにも恥知らずな質問だった。

質疑はまず、「JA組合長のほとんどが、今回のTPP大筋合意は公約違反であり、安倍内閣による農業政策について評価できないとしている」、と農業団体の立場を代弁して安倍総理を批判した。「民主党は農協の味方です」、と言わんばかりだ。

しかし、政権時代の民主党はJAを露骨に冷遇していた。自民党の票田だったこともあり、容赦なく締め上げた。JA支援予算は次々打ち切られ、新たな農業支援策からも閉め出した。「農協が農業を衰退させている」と公言してはばからなかった。

民主党のTPPに対し、最も抗議したのはJAだった。JAや農業者は、各地で反対・抗議活動を展開した。でも、民主党は一切耳を傾けず、「抵抗勢力」と敵視し批判した。菅直人は、当てつけのように賛成派の農業法人を視察して褒めちぎった。

そんな民主党議員から、今になって「JAも反対している!」と批判されれば、安倍総理でなくとも反感を覚えずにはいられまい。

続いて、福島議員は「今回のTPP交渉結果は自民党の公約を果たしていない」と批判した。「聖域」が守られていない、と言いたいらしい。安倍総理は、「全体の平均の関税撤廃率は9割半ばだが、日本は8割台に留まった。公約どおりだ」と述べた。

安倍総理の言うとおり、農業分野の関税撤廃率は日本だけ突出して低い。参加国らから見れば「聖域」に他ならず、よくこんな日本優遇の内容で合意出来たものだと感心する。ところが、福島議員は納得せず、次のとおり追撃した。

「聖域保護など当たり前のことだ。聖域を守ったのかではなく、日本の農業を守ったかどうかが大事だ」と。唖然とする。民主党のTPPに聖域は無かった。例外はTPPの理念に反するとし、聖域を求めるJAらは抵抗勢力扱いされ蹂躙された。

聖域無く関税を撤廃すれば、農業が深刻なダメージを受けることは民主党も自覚していた。だから、民主党は農家全ての損失補償を約束した。農家の生活保護化とも言うべき壮大なバラマキ計画で、恐ろしいことに本当に実行された。戸別所得補償制度だ。

一通り安倍総理を批判した福島議員は、最後に民主党の政策を自画自賛して言った。

「安倍政権の農政は、上から目線でやり方を強制する社会主義的なやり方。対して民主党が政権時に導入した戸別所得補償制度は、中長期的に生産者が利益を予測できるやり方で、農家が自主的に工夫できるやり方を後押しするものだ」

先に説明したとおり、戸別所得補償制度は農業崩壊を見越した巨額かつ終わりの見えない空前絶後のバラマキ政策だ。福島議員は「農家が自由に使える」と胸を張るが、ものは言い様で、要は無秩序を自由と言い換えているにすぎない。

こんな質疑はナンセンスだ。

謙虚になれ。虚勢を張るな。政権時代の失敗を認める勇気を示せ。ちゃんと検証して、ミスはミスとして認めて、建設的な質疑をぶつければ、安倍総理も真剣に答える。答えなかったとしても、その時は世論の批判が安倍自民党に向かうだけだ。

ミスを認めることは、民主党の価値を下げるものではない。むしろ逆、国民の信頼を取り戻すために不可欠だ。まあ、no-risuは民主党の復活など微塵も望まないが、現国会質疑は見るに堪えないし、自民党のためにも責任野党は必要なのである。


民主党広報:【衆院予算委】「TPP交渉で日本の農業を守ったのか」福島議員
http://blogos.com/article/154427/
 福島伸享議員は12日の衆院予算委員会で質疑に立ち、TPP大筋合意に対する国内対策や、安倍政権の農政と民主党の農政の違いなどについて問いただした。
 福島議員は、日本農業新聞のアンケート結果を示して「JA組合長のほとんどが、今回のTPP大筋合意は公約違反であり、安倍内閣による農業政策について評価できないとしている」と述べた上で、「今回のTPP交渉結果は自民党の公約を果たしたと言えるのか」と問いただした。
" 「全体の平均の関税撤廃率は9割半ばだが、日本は8割台に留まった。公約どおりだ」と答えた安倍総理に、福島議員は「『聖域なき関税撤廃を前提とするするTPP交渉参加には反対する』などとする自民党の公約は、当たり前のことが書いてあるにすぎない。公約に書いてある文言を守ったかどうかではなく、日本の農業を守ったかどうかが大事だ」と指摘した。
福島伸享議員が総理にただす"
 TPP対策について福島議員は、「2015年度補正予算にはTPP対策関連予算として、3122億円も計上されている。今後は当初予算としてさらに多額の予算が計上されるが、関税撤廃をして何も対策を打たなかった場合の農林水産関係の生産減少額の試算を公表しなければ、その予算が適当かどうかわからない」として、試算結果を出すよう要求した。
 森山農水大臣は、「政府として国内対策の具体化を進めている。対策を考慮しない試算を公表することは試算結果が独り歩きをする」などとして、試算を出すことはできないと答えた。福島議員は、「政治の役割りは、正直な数字を提示して対策を行なうというものだ」と重ねて指摘した。
 安倍政権の農政と民主党の農政の違いについて福島議員は、「安倍政権の農政は2分の1補助で常に農家に借金を背負わせて苦しめるうえに、上から目線でやり方を強制する社会主義的なやり方。対して民主党が政権時に導入した戸別所得補償制度は、中長期的に生産者が利益を予測できるやり方で、農家が自主的に工夫できるやり方を後押しするものだ」と述べ、安倍政権の農政との明確な違いを強調した。

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改めて、民主党政権に堕ちた恐怖を思い出す

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