サンゴ礁の損傷を期待していた翁長氏 裁判長が一喝

「銃剣とブルドーザー」を彷彿させる行為だ-。
 沖縄県翁長雄志知事は米軍普天間飛行場移設をめぐる代執行訴訟の意見陳述で、法律に基づく辺野古移設を米軍の土地強制接収になぞらえた。法廷闘争にあたっては筋が通らない発言も際立ち始めており、勝訴より政治的プロパガンダ発信を優先させようとする狙いが透けてみえた。
 「県民は人権、自己決定権をないがしろにされてきた」
 翁長氏は冒頭の意見陳述を求められると、顔を紅潮させながら、用意した文書を読み上げた。訴訟の本旨である自身の埋め立て承認取り消しの正当性を訴える言葉は一つもなく、陳述を終えると2時間近くひとごとのようにやり取りを聞いていた。
 この間、法廷闘争を丸投げされた県弁護団は、裁判長との会話がほとんどかみ合わないまま。裁判長の許可もなく政府側への質問を続け、裁判長から「発言をやめてください」と一喝される場面もあった。
 翁長氏は陳述で、仲井真弘多前知事が辺野古の埋め立てを承認する際に政府に要請した普天間飛行場の5年以内の運用停止について「着実に前に進めるべきではなかったか」と訴え、運用停止の実現だけは求めていく考えを表明した。
 これには、県幹部からも「仲井真氏が行った承認を取り消しておきながら、運用停止の要求だけは引き継ぐというのは国民の理解が得られないのではないか」との声が漏れた。
 また、翁長氏は代執行訴訟に当たり、主張をまとめた答弁書で、普天間飛行場移設について「(移設)工事をぜひとも続行しなければならない緊急性は存しない」と明記。訴訟で政府の訴えを却下したとしても、「(普天間飛行場返還合意から)19年間にわたって(移設が)実現しなかった状況に新たな変更が生じない、というだけだ」と強調している。
 そうした姿勢は、住宅密集地にある普天間飛行場の危険除去を軽んじていると受け取られかねない。
 さらに、準備書面では「わずか数年前には県外移設が既定路線であった」と記述している。鳩山由紀夫政権時代のことを指しているとみられるが、県外移設を検討したのは8カ月にすぎず、その後、辺野古移設に回帰した鳩山氏の迷走を既定路線というのも明らかな誇張といえる。
 防衛省辺野古沖で投下したブロックがサンゴ礁を傷つけたかどうか県が調査した結果に関し、11月17日の記者会見で「岩礁破砕がなされたかについては残念ながら判断できなかった」とも述べた。「サンゴ礁の損傷を期待していたと発言したに等しい」。別の幹部は耳を疑ったという。(半沢尚久)

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