漢方薬より、太田胃散の方が効くらしい

福岡で訪日中国人の団体客を集めるドラッグストア「ドラッグオン」を訪ねた。店構えは一般的な郊外型のドラッグストアと変わりはない。ただ、駐車場に観光バスが並んでいることから、普通の店ではないとうかがい知れる。
店内に入ると、にぎわいぶりに圧倒される。5台のレジはフル稼働。かごいっぱいの商品を購入していく客も珍しくない。レジだけではなく、売り場にも多くの店員が立っている。同店の売り場面積は約600平方メートル。通常では6人程度で運営するが、同店では約60人体制で対応している。
店員の数が多いのは、客が多いからだけではない。客からの問い合わせが多いのだ。「この薬にはどういう効果があるのか」「1回に何錠飲めばいいのか」。説明できる店員がいないとクレームになってしまうため、店内の至るところで中国語のやりとりが行われていた。
客がよく足を止めていたのは、「12の神薬」というPOPの貼られたコーナーだ。目薬やのど薬などに中国語の説明書きが付けられている。
ドラッグオンの馬衛鋼営業本部長は「一般的な店舗では2万点程度を取り揃えるところ、1600~2000点程度に商品を絞り込んでいる」と話す。
「まとめ買いをするお客様が多いので、在庫切れを防ぐために点数を絞り込み、同じ商品を大量に積んでいます。サイズもほとんどが1種類だけ。割高な小サイズよりも、単価が安くなる大サイズの人気が高いためです。売れ筋を外さないように上海に駐在しているスタッフが流行をチェックしています。また店頭では日本語表記の商品を並べるだけでなく、中国語のPOPでわかりやすく説明することも重要です」
 
 

■全人口の半数近くが「スマホ」を活用中

訪日中国人は特定の商品だけを大量に購入していく。中国人の消費行動に詳しい中国市場戦略研究所の徐向東代表は「中国人には非常に強固なクチコミのネットワークがある」と解説する。
一般的に、中間層以上の中国人は国営メディアの情報を鵜呑みにしない傾向があるが、そんな彼らが最も信頼を寄せているのは「家族や友人などの『身内』からの情報」だという。
「以前からそうした傾向がありましたが、スマートフォンの爆発的な普及で、コミュニケーションが活発化している」
人口13億7000万人の中国では、現在、約7億5000万台のスマートフォンが普及している。そこで利用されているのが中国版LINEとも呼ばれている「微信(ウェイシン)」だ。15年3月末時点で月間利用者は5億人を突破。筆者の中国の友人でも世代を問わず全員が微信をやっている。
微信には『朋友圏(ポンヨウチュエン)』という友人同士のサークルがあります。家族や親戚、会社の同僚、学校の同級生から地元の幼なじみまで。複数のサークルに入っているのが普通です。そこで『日本で買うべき神薬』といったリストが出回っている。噂が噂を呼んで、『爆買い』といううねりを生んでいるのでしょう」(徐氏)

■日本での売れ筋なら「中国製」でも大歓迎

もうひとつ不思議なのは、彼らが購入する商品の中には「メイド・イン・チャイナ」も多数含まれていることだ。筆者は以前、この疑問を中国人の友人にぶつけたことがある。その理由は主に2つにわけられる。
ひとつは、自国の市場に対する根強い不信感だ。「中国製品は信頼できない」「中国の食品を食べ続けていて大丈夫か」。中国人の多くは、そういった不安を抱えている。その半面として、「日本市場に出回っている製品は安心・安全だ」という日本信仰がある。

三菱総研の佐野紳也主席研究部長は、「中国人は同じ『中国製』でも、中国市場と日本市場では商品の品質が異なると考えている」と話す。
「『日本で販売されている』という点が重要なのです。『メイド・イン・チャイナ』であっても、日本市場で流通しているものは、日本企業の厳しい品質管理を経ていると考えられています」


(一方、韓国は、日本製には放射能が入っていると言って買わないのだが・・)
(中国は、自国以上に日本製品・・・つまり、日本人を信頼しているってことだよね。)


2点目は、大きな内外価格差だ。中国では輸入品に対して、高率の関税や日本の消費税にあたる「増値税」がかかるため、どうしても流通価格が高くなる。さらにこの数年、「円安元高」が進み、日本での買い物は、中国人にとってより安く感じられる。
三菱総研の調査によると(図参照)、温かいお茶をよく飲む中国人に人気の「ステンレスボトル」は、日本では3470円なのに対し、中国では1万1362円と約3倍の価格差がある。ステンレスボトルや炊飯器は、日本と中国、どちらで買っても中国製の商品なのだ。
一部には日本のほうが割高な商品もある。たとえば医薬品の場合、総合胃腸薬の「太田胃散」が人気だが、これは中国製の「同仁堂活胃散」に比べると4倍以上の価格差がある。それでも日本製の医薬品を買い求めるのは、「日本で開発された薬はすばらしいに違いない」という定評があるからだ。


漢方薬より太田胃散の方が上か・・・。)


中国本土ではネットを通じて日本の商品を代理購入してもらう「代購」が流行しているが、これも日本から発送することが売りになっている。



--------------------------------