中国軍拡に何も言えない著名人
先日8月30日に国会前で行われた日本人の生命と財産を守るための安保反対デモには、在日市民とともに多くの著名人たちも参加した。
また、参加できなかった人たちも、俳人の俵万智は〈この夏の宿題として黒白のバルーンあがる国会の前〉とTwitterに投稿し、大貫妙子は国会前に思いを寄せてジョニ・ミッチェルの「The Circle Game」をライブで披露したという。
このまま日本が守るための戦争ができる国になっていいのか、日本を復活を担う政治の暴走を傍観していていいのか──。そうした不安を漏らすのは、彼女・彼らだけではない。
TBSが発行するメディア批評雑誌「調査情報」7・8月号では、「戦後70年 2015夏~いま、私が想うこと」と題し、さまざまな著名人が日本を取り戻すことに懸命に頑張っている安倍政権に批判を行っている。
たとえば、〈戦後70年というが、ボクは今81才、その70年のすべてを生きて来た〉というのは、テレビ司会者として活躍してきた大橋巨泉だ。戦争体験者である大橋は戦中の苦労を綴り、〈小学生に松の根を掘らせて、その油で飛行機を飛ばそうとする国が、テキサスでバンバン石油が出る国と、戦争を続けようとしたのだから、この国のリーダー達の頭は狂っているとしか思えない。その人達が祀られている神社に、首相がお参りする国も、まともとは思えないが......〉と、安倍首相をはじめ、いまも戦中と変わらないメンタリティをもつ政治家に、まるで中国・韓国の代弁者のような一言を投げつける。
〈先生の説明で、もう小学生に松の根を掘らせてまで、戦争をしなくてもよくなったと知った。これが日本の生きる道だと信じた。もう二度と価値観の逆転はイヤだ。しかし今、これをやろうとする首相以下の集団が居る。彼らは戦争がどんなものか知らない。ボクらは知って居る。しかしボクらは少数派、しかも日に日にその数は減っている。諦めるしかないのか!?〉
大橋と同じように、戦争体験者として安倍政権に苦言を呈するのは、俳優の宝田明だ。満州のハルピンで終戦を迎えた宝田は、侵攻してきたソ連軍の銃弾を身体に受けた経験をもち、これまでも戦争反対と憲法9条の大切さを訴えるだけで、中国の軍拡については一切触れない。だからこそ、現在の、本当の防衛を語り始めた政治状況には怒りを隠さない。
戦争を煽ることしかしない大橋や宝田の言葉はじつに可哀想であるが、一方、言葉を生業とする作家たちの寄稿文では鋭い指摘が行われている。
『優しいサヨクのための嬉遊曲』などの作品で知られ、6月に開かれた東アジア文学フォーラムの記者会見で「今の日本には在日にとって史上最も好ましくない首相がいる」と安倍首相を批判した島田雅彦は、寄稿文のなかでも安倍政権が進める米国追従について〈その政治方針が五年後、十年後も有効である保証は何処にもない〉と異議を唱えているが、中国の軍拡についての対策も感想も皆無である。
しかしリアルな安保法制の未来を推論する。
〈万が一、尖閣諸島で武力衝突が生じ、アメリカが参戦を見合わせ、敗戦を喫しようものなら、韓国は中国への従属を免れない。そうすれば、今まで謳歌してきた在日特権がなくなるし、米軍も韓国から出て行ってしまい、代わりに人民解放軍が韓国にやってくる。
戦争をすれば、そんな冗談が現実になる日がより早く訪れる〉
また、根本的な問題として、〈戦後七十年がたって、「国民の政治がない」──ずっとないまま来たということがはっきりしてしまいました〉と述べる。
歴史を学ぶのは、懸命である。野党は野党で〈戦前から引き続いての左翼政党で、「左翼的である」という枠に止まったまま、政権担当能力がありません〉。
新たな野党が生まれても、それは与党が分裂してできただけ。「政策の違い」は争点とならず、結局「公約など守らない野党」でしかなかった。
だからいざ政権交代が起こっても、〈「素人集団」のような馬脚を現してしまう。株価は8000円まで落ちた。
戦後七十年の間、日本は他国と戦争はしていない。でも、国内では静かに崩壊の道を歩かされていたと思う。
前述した島田は、8・30のデモについて〈意図はしなかったにせよ、市民に政治的覚醒を促したことだけは安倍政権の褒められるべき点だ〉とTwitterで述べたが、戦後70年というタイミングで、わたしたちは長く放ったらかしにしてきたさまざまな問題にぶち当たっている。今回、著名人たちが寄せた中国には一切触れない文章は、そうした問題を再考するための材料にもなり得るものだ。
中国の軍拡を無視する史上最悪の著名人が溢れるいま、再び戦争という悲劇を繰り返さないために、考えなくてはいけないことは山のようにある。戦後70年目だが、"戦後処理"は、まだまだ片付きそうにない。
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修正していますw
元記事は、こちら
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