朴槿恵氏の描く未来は、統一朝鮮と大陸中国の友好

 中国と韓国の蜜月は習近平氏の訪韓で最高潮に達した。「政熱経熱」に酔いしれる韓国だが、習近平氏の言葉には安全保障分野で韓国を日米韓から引きはがし、歴史問題で取り込み、経済では呑み込むことへの自信がみなぎっているようだ。この中国の怒涛(どとう)のような秋波に、韓国の一部には戸惑いも見受けられるが、陰りのない笑みを浮かべて応じているのは朴槿恵大統領その人である。朴氏は韓国の未来にどんな夢を追っている? (久保田るり子

■押せ押せの習近平氏はブルトーザー外交

 中韓首脳会談は、旅客船セウォル号の沈没事故で苦悩続きだった朴槿恵氏にとって、久しぶりの華やかな外交舞台だった。鮮やかなオレンジ色のジャケット姿で共同記者会見した朴氏は、生き生きとした表情で習近平氏に握手を求めていた。

 中韓は首脳会談で両国関係を「かつてないほどのレベルの高い戦略的なパートナーシップ」と位置づけた。だが、中国の本当の戦略は、韓国を日米韓から引き離すことにある。

 中国はまず、中国主導の安保機構「アジア安全保障協力機構」への韓国の取り込みの誘いを本格化させた。「(中国主導の)新しいアジアの秩序に韓国も重要な役割を果たしてほしい」との甘い言葉である。

 安全保障だけではない。歴史問題では、反日路線の延長で抗日連帯を呼びかけた。来年は日本にとっては終戦70年、中国にとっては抗日勝利70年、韓国にとっては光復(日本統治からの解放)70年だ。

 習氏は朴氏に「抗日戦争勝利と光復節中韓共同で祝おう」と持ちかけた。8月15日の意味は中国と韓国では全く異なるが、「反日」「抗日」で取り込もうとの強引な誘いだ。この提案は、事前調整なしに同夜の中国の国営テレビで一方的に報じられたため、さすがの韓国も当惑したようだ。会談で朴氏は「韓国でも意味のある行事を考えている」と明言を避けたとされている。

 東アジアによける中国包囲網に韓国を利用しようとの、あからさまな中国の外交攻勢には、さすがの韓国メディアも躊躇(ちゅうちょ)をみせ、「韓国の国益に合致しない問題には、はっきりノーと言わなければならない」(5日、朝鮮日報社説)などと指摘したところもあるが、全般的には親中路線の全開である。
 
 
■米国は韓国を止められない?中韓VS日米の新構図が始まる

 習氏はソウル大の講演で「中国はアジア・インフラ投資銀行(AIIB)創設を提案した。積極的な参加を希望する」と韓国を誘った。AIIBは日米が主導するアジア開発銀行(ADB)に対抗しようというアジア銀行だ。

 中国は今年5月、上海で開催した「アジア信頼醸成措置会議」で安全保障や経済などの新機構を提案、「アジアの安全はアジアで守る」をスローガンに「アジア新秩序」を主張した。これが中国包囲網へ日米対抗措置であるのは明白だが、韓国の立場は微妙だ。昨年の中韓貿易は2742億ドル(約27兆7000億円)で日韓の947億ドル、韓米の1038億ドルを合わせた額より中韓が勝るため、経済の対中傾斜が政治も動かしている。

 中国から多くの経済人も同行した今回の習氏の訪韓では、韓国ウォンと中国元の直接取引市場開設でも合意、中韓自由貿易協定(FTA)も年内妥結を目指すことで一致した。

 両国は2年後までに1000万人の人的交流を行うという。
来年は「中国訪問の年」で再来年は「韓国訪問の年」に指定した。
もはや、
韓国の中国傾斜は誰にも止められない。

 米国は、そんな韓国の中国熱を苦々しく受け止めている。習氏の韓国訪問を米主要メディアは「中国は日韓関係悪化を利用し日米韓にくさびを打ち込もうとしている」との見方で警戒感を表した。とくに巨大市場と資金力を背景にした中国の経済分野での韓国取り込みを懸念、中韓間で中国のアジア・インフラ投資銀行創設問題が話し合われたことを、「ある種の驚き」(米紙ニューヨーク・タイムズ)と辛(しん)辣(らつ)に指摘した。

 驚きといえば、韓国側の対中配慮である。
中韓間には中国の「東北工程」をめぐる歴史認識問題があるが全く不問だ
また習氏は講演で「中韓は歴史的にお互いを支え、ともに克服してきた」などと語ったが、
中国の度重なる侵略で韓国は蹂躙(じゅうりん)され、属国として朝貢した歴史がある。
たった60年前の朝鮮戦争では相対して戦った。韓国はこうした過去には触れず、中国は共同宣言に「北朝鮮の核実験に反対」の文言を入れることさえ拒んだという。

 朴槿恵氏の中国への憧憬は老荘思想など多くの書物による文化への傾倒とされるが、目前の中国が獰猛(どうもう)な軍事覇権国家であることへの警戒感はいまのところ、ほとんど感じられない。朴槿恵氏の描く未来は、統一朝鮮と大陸中国の友好なのだろうか?
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属国は可哀想と思っていたけど・・
そうじゃなかったんだね。