いじめは解決できる

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「いじめ」はどの教室にも現れる?
「いじめは、どの教室にも現れます。ひどいクラスほど、いじめはひどくなります。このいじめは、子どもに話し合わせてもなくなりません。子ども社会の構造から生まれてくるからです」
「この子ども社会のいじめの構造をなくすことができるのは、教師だけです」
       (『いじめの構造を破壊せよ』(明治図書・教育新書)
20年以上も前からそう主張して、いじめと闘うノウハウや、いじめ対応のシステムづくりの必要性を説いてきたのが、TOSS(教育技術法則化運動)代表の向山洋一氏です。
向山氏によれば、「いじめ」問題でたいせつなことは次の三つ。
1)早期発見
2)発見したときの、一両日中の迅速な対応
3)かつ適切な対応
です。
ところが、技量のない教師だと、
1)いじめの発見が遅れ、2)なかなか手を打たず、しかも3)ピントはずれの対応をする。
その結果、「いじめ」がいつまでも解決しないのだといいます。
今回の事件も、まさにそれでした。
技量のない教師、技量のある教師
向山氏によれば、
①授業がうまい。
②子どもを統率できる
この二つの力が身に付いていない教師の場合、クラスは騒乱状態になっていく。やがては、「弱肉強食」の社会がつくられ、いじめが多発しやすくなる
というのです。
ほんとうだろうか、と思われる方がいるかもしれません。
しかし、「授業がうまい」ということは、子どもの力を伸ばすために先生が授業の腕を日夜磨いて工夫しているからです。「子どもを統率できる」のは、子どもに真摯に向き合い、かつそのための技術を持っていないとできないことです。
そうした教師が担任するクラスは、誰が考えても、まとまりがあって、落ち着いているのではないでしょうか。
「いじめ」問題には技量のない教師の問題が大きく立ちはだかっているわけですが、向山氏の次のような言葉に触れると私たちは救われる思いがします。
「『いじめ』は『子どもが自らの命を絶つ』という最大級の重大事件である。
子どもの生命がなくなる(しかも自分で絶つ)という以上に、重大事件は学校にはない。
(略)すべての教師は、次のことをする義務を負っている。
『いじめを初期のうちに発見する』
『いじめられた子の生命を守る』
この二つは、すべての教師の『絶対的な義務』なのだ。
(略)『いじめ』が生じたとき、担任がすべきことは『いじめられた子を断固として守る』という力強い宣言である。
『先生だけではない。校長先生をはじめ、すべての先生がいじめられた子の味方です』という宣言である」
いじめと対処するノウハウ
向山氏が代表を務めるTOSS(教育技術法則化運動)は、優れた教育技術や方法を全国から集め、それをさらに練りあげて共通の財産とし、教師たちの教育の力をあげていこうという運動です。
向山氏は2000年まで小学校の教職にあり、胸を打つ素晴らしい授業をおこなってきました。「いじめ」をテーマにした授業もその一つです。興味がある方は、『いじめの構造を破壊せよ』(明治図書・教育新書)、あるいは絶版になっていますが『「いじめ」は必ず解決できる』(扶桑社・編著)をぜひ一読してください。後者には、「いじめ」と闘った教師たちの事例も数多く紹介されています。ともかく、両著には、「いじめ」とどう対処すればいいかのノウハウも詳しく紹介されているのです。
たとえば、
「教師なら、子どもの正義感を引き出すことができる。
『教師一人対いじめっこグループ』で対決すると、だいたい教師が負ける。
『いじめっ子』は、喧嘩の天才なのだ。
教師は『大人』としての戦略戦術を持たなければならない。それは正義感の強い子どもたちを味方につけることだ。『教師と正義感の強い子どもたち対いじめっ子グループ』という対決にするのだ。」といった具合です。
それだけでなく、「反省した子を包み込んでやることがたいせつ」という一文もあって、向山氏の優しさが胸に響きます。
また、学校におけるシステムづくりについても触れられています。
アンケート調査の実施などで「いじめ」を早期に掴むシステム、職員会議を開いて全員で討議して行動に移すなどです。
こうしたシステムが学校にできてないことも大問題なのです。
20年も前から有効な方法が示されているのに、なぜそれが広まっていないのか。教育界と政治の怠慢ではないのかと、腹立たしい気持ちになります。

保護者は何ができるのか
では、保護者は何ができるのか。
知は力なり です。
学校側に「いじめ」対応のシステムづくりを働きかけることや、「いじめ」と本気になって闘う教師を応援することもできます。
また、「弱い者いじめをしてはいけない」「弱い者いじめをすることは、人間としてほんとうに恥ずかしいことだ」と、子どもにしっかり教えることも大事です。
向山氏の授業を参考にして、次のように子どもに話す方法もあります。
「人間は悪いことをすると、脳からノルアドレナリンという物質が出てくるのよ。このノルアドレナリンはホルモンの一種で、強力な毒性があるの。いつもいつも悪いことをしていると、そのたびにノルアドレナリンが出て、人間を病気にすることもあるのよ」
「いじめ」は犯罪です。
もし、自分の子が長期間いじめられ、怪我を負ったのに、学校側に訴えてもなんら対策を打ってもらえない場合はどうしたらいいのか。
警察に被害届を出すことでしょう。
その前に、「これは犯罪だと思うので、警察に被害届を出す」と、担任に伝えるのがいいと紹介されています。
学校側が本気になって取り組むので、解決に向かうようです。
傷ましい事件を繰り返さないためには、私たち大人が毅然とすること。
一人の少年が死に向かうまでに追いつめられたのに、「その真相を自分の命にかけても究明する」という教師や関係者は現れているのでしょうか。
子どもたちは、そんな大人社会をどう思い、どう受け止めているのか――それを考えると、私たち大人の責任は一層大きいと思うのです。
 
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いじめを解決できることが研究され、本にもなっているのに
何故、その本が絶版となり、
いじめは陰湿化し続けるのか・・