【主張】世界柔道の成功 ルールが導いた原点回帰

そうだろう。
ルールによって、姿が変わる。
美しい姿は、厳しいルールを守ることで保たれる。

足をタックルするような柔道で、世界一になろうとする姿は醜い。

なんでもありでも勝てば官軍だろう。

でも、その官軍は見る人が見れば観にくいものだ。

漁船の振りをして、他国を攻撃する何でもありの国も然り・・・

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【主張】世界柔道の成功 ルールが導いた原点回帰
2010.9.21 02:46

このニュースのトピックス:主張
 東京・代々木で行われた世界柔道選手権が成功裏に閉幕した。日本代表が史上最多の金メダル10個を獲得したこと以上に、柔道の「原点回帰」に道筋をつけたことを高く評価したい。

 タックルまがいの足取り技や抱きつく行為を反則とした新ルールで戦われた大会だった。しっかり組んで投げ合う好勝負や、美しい一本勝ちが多かった。日本10個の金メダルは、その副産物でもあった。新ルールは2年後の12月31日まで適用され、ロンドン五輪もこのルールで戦われる。

 柔道は明治15年、教育者でもあった嘉納治五郎師範が東京都台東区の永昌寺境内に講道館を創設したことを起源とする。今年は嘉納師範の生誕150年の記念の年でもあった。

 「JUDO」を、その心とともに世界に広めた功労者は、昭和39年、東京五輪無差別級を制し、歓喜のあまり畳に上がろうとするオランダ関係者を押しとどめたアントン・ヘーシンク氏だった。

 その東京で昭和33年以来、52年ぶりに開催された世界選手権は、原点回帰の場にふさわしかった。会場には「原点」「本物」の墨書が掲げられた。メダルには、嘉納師範の肖像と、柔道の精神として唱えた「精力善用」「自他共栄」の文字が彫り込まれた。

 ヘーシンク氏への黙祷(もくとう)で始まった開会式では、全日本柔道連盟上村春樹会長が「後世に正しく柔道を伝える大会にしたい」とあいさつした。

 来賓の石原慎太郎都知事は「北京五輪で見た柔道はにわとりのけんかのようで、ちっとも美しくなかった。あんなものは柔道じゃない。柔道の芸術性は一本にある」と語った。その北京五輪では、最重量級を制した日本人金メダリストが「きれいな一本を見たければ体操会場に行けばいい」と話したことが記憶に残る。

 柔道は壊れかけていた。

 危機感を覚えた国際柔道連盟は今年1月、試合審判規定を改正した。正しく組んで理にかなった技で一本を取る、本来の柔道を取り戻すためだった。

 あらゆる分野で日本の存在感が薄れつつあるいま、東京大会の成功の意義は大きい。好結果は、ルールが作った。ルールは危機感が変えさせた。この事実は、柔道、スポーツ界にとどまらない教訓として、広く参考にしたい。